AI(人工知能)やロボティクスに代表されるイノベーションは小売業の姿を大きく変えようとしています。過去の延長線上に生き残る道はありません。小売業はデジタル化がもたらす変化のなかで、ビジネスモデルを刷新し続け、生活者に新たな価値を提供していく必要があります。一方、テクノロジーにとどまらず、これまで小売業が日頃培ってきた匠の技や現場での創意工夫もイノベーションであり、これに磨きをかけ、豊かで快適で便利なライフスタイルを顧客に提供していくことも小売業の重要な使命であり続けるでしょう。
同時に小売業は、Z世代の台頭やダイバーシティー&インクルージョンの受容、一部の国で急速に進む高齢化、都市問題、グローバルな気候変動問題など、内外の様々な変化や社会的課題への対応に迫られています。さらに2030年を期限とするSDGsの達成、多くの国・地域が掲げる2050年のカーボンニュートラルの実現という観点からも、弛むことなく進化し続けていく必要があります。
いま日本では少子高齢化が進展し、小売業においては人手不足と人件費高騰、物流問題、カスタマーハラスメント、ロスプリベンション、頻発する自然災害への対応など、多くの課題を抱えています。これらのなかにはアジア太平洋地域の国・地域が将来直面するであろう事柄も多くあり、課題先進国である日本の小売業の取り組みは、同地域の小売業者が、長期的な展望を描くうえで大いに参考になることでしょう。
そして、大きく社会が変化するなかでも、小売業には変わらない普遍的な法則があります。それは「小売業は常に顧客に寄り添い、結果として顧客の支持を得て繁栄する」というものです。顧客はもちろん、従業員や取引先、地域社会など事業に関わる多様なステークホルダーにも支えられ、ともに繫栄していく姿勢を持ち続けるべきです。小売業は、製造・卸売業、ITベンダーからホテル、観光、飲食などのサービス産業に至るまで裾野の広い産業であり、「三方よし」という日本古来の商道徳や「自利利他」といったアジア由来の思想の大切さはいつの時代も変わりません。
アジア太平洋地域は世界有数の巨大市場であり、今後もさらなる成長が予想されています。内在する地域課題を克服し、さらに魅力的な地域になることを目指して、わたくしたちは以上のようなコンセプトを踏まえ、「小売業の未来~革新と普遍~」というテーマのもと、第22回アジア太平洋小売業者大会を東京で開催します。この地域の小売業および小売業に繋がる様々な関係者が一堂に集い、国や地域、業種や業態の垣根を越えて、持続可能な小売業の未来を見据え、お互いの経験や現状を共有し、学び合い、交流を深め、ビジネスの機会を探る大会にしたいと考えております。